元気で楽しいまちづくりネットワーク:元気・まちネット:この法人は、広く一般市民を対象として、地域のもつ豊かな自然を活かし、都市と農山・漁村の人的交流を促しながら、自然体験・環境教育・福祉と健康を充分享受出来る機会をつくります。会員で元気なまちを見学したり、地元の人たちとの交流を通して講演会/講習会を催しながら、自然豊かな郷土を誇れる環境発掘と、元気で楽しい住民参加型のまちづくりを立案・構築し、自然豊かで元気溢れるまちを創造し、次世代に引き継ぐことを目的とします。
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何故、私が“元気・まちネット”を立ち上げたのか かがり火 113号





地域交流雑誌『かがり火
no.113(2006.7)より転載
2006.07.13 矢口正武(造園コンサルタント)
最近のコンサルタント業界は、見積価格のたたき合い
大天白公園
私が設計した大天白公園【埼玉県羽生市】
通称「フジ公園」として市民から愛される公園になっている。
私の職業は、造園コンサルタントです。
都市公園の計画設計から、各種リゾート地の基本構想・計画、住民参加(ワークショップ)のまちづくり、住宅外構造園の基本・実施設計などが主な仕事です。
この仕事は今でも大好きで、自分では天職と思っています。ここ数年、諫早湾の干拓問題や吉野川河口堰問題、脱ダム宣言から新幹線駅建設凍結など、環境に関する話題がグローバルな形で議論され、専門ではない一般市民の間でも話題になっています。環境保護や保全に直結する職業を選んだことに誇りを持っています。

しかし、広く一般に認識されてきた地球環境問題。大気汚染と健康、オゾン層の破壊、森林破壊、ヒートアイランドなどが大きく取り上げられるようになったにもかかわらず、緑地関係(水・緑・土)公共事業の大幅な縮小などで、私達が所属する造園コンサルタント業界は青色吐息の状態であります。なぜか?・・・公共事業の大幅な削減、談合体質、設計料のたたき合い、いい加減なコンサルタント業務などが業界の信用を低下させていることにも原因があるのですが、そればかりとは限らないのです。
コンサルタントはいつも理不尽、不合理な目に遭わされる
一年中訪れる人が後を立たない東京都立の葛西臨海水族園(写真は入り口広場)も、胸を張れる仕事となった。【東京都江戸川区】
確かにコンサルタント側にも問題はあるかも知れません。名称や固有名詞・地名を替えればどこにでも提案可能な、ずさんなプレゼンテーションや設計報告書がまかり通ってきました。特にバブルの頃はひどかった。「かがり火」44号でもそのようなことを取り上げて貰ったことがあります。最近でも、たった3ヶ月という短期間で作成された、自然に関する調査報告書というものを目にしました。自然は最低でも、1年を通じて調査しないと見えて来ない部分が多々あるにも拘わらず、夏から秋にかけて、たった3ヶ月間で作られた自然の環境調査報告書をみるにつけ、この仕事を天職だと思って携わってきた私にとっては、とてもショックな出来事でありました。

 発注者側にも大きな問題が見え隠れします。まちづくりに対する首長の哲学がなかったり、首長が在任中に何らかの形(功績)を示したいがために前任者の業務を素直に引き継がない。これでは税金の無駄遣いと言われても仕方がない。その上、理由がないのに勝手に設計を変更または止めてしまう。また、コンセプトが合意形成されて施行されているにもかかわらず、担当者が2,3年で簡単に異動になる人事行政の問題点、これまでの業務の経緯が、前任者から新任者に正しく伝わっていないために、担当者や上司の個人的な趣味嗜好で簡単に変わってしまうなどは朝飯前であります。(水や緑、遊器具に関することに、興味を持つ担当者が結構多いのも事実です。)

 行政の財政事情で変わったために生じる設計変更は致し方のないこととは思うものの、専門でもない担当者の趣味嗜好で変更させられる側にとって、こんな屈辱的ものはありません。
「どんな仕事をしているんですか」、「設計の仕事です。」と答えれば、殆どの人は建築や土木設計と思ってしまいがちです。「いえ、造園ですけど・・・」、「ああ〜植木屋さんですか」、「いや、植木も入りますけど、公共造園と言って・・・」長い説明のあと、「ああ〜そうでなんだ。素敵な仕事ですね。面白そう・・・」という答えが返ってくる。
そう、面白くて楽しい、それでいてクリエイティブな仕事である。だけどイマイチこの仕事のことを知っている人は少ない。というより殆どいないんじゃないかとさえ思います。

葛西臨海水族園
葛西臨海水族園の復元した水辺空間。長い年月をかけて行われてきた適切な維持管理が、この自然をより本来のあるべき姿へと導いている。
 つい最近、BE−PAL(夏号)という雑誌に葛西臨海水族園のことがカラー5ページにわたって掲載されていました。“水辺の自然”という、かつては東京のどこにでもあった自然の小川を270mの距離に縮小、再生復元した水辺であります。一見普通に見えるこの水辺には、多種多様な生き物が自然のままで生息しています。設計を担当したのは不肖、私です。20年経った今でも外来種の侵入に犯されることなく、自然のままの姿で保たれています。ということは、東京都職員の方のたゆまざる維持管理のたまものであります。今でもときどき訪れては観察しています。この5月にも我が社にアルバイトで勉強にきている学生を連れて見学会をおこなったばかりです。自然は生き物で、この“水辺”も当初よりも10年、20年と適切な維持管理を経ることによって、本当のあるべき姿に変わっていきます。

 また、成田市には坂田ヶ池総合公園があります。当時(平成5年)は、背丈ほどもあるシノダケやクズの葉の密生した、手つかずの一面ヤブだらけの荒れた雑木林でした。平成5年から6年にかけて設計に1年半、工事に10年の歳月をかけて昨年(平成17年)完成しました。私は幸運にも設計から完成まで、様々な立場で携わることができました。この10年の間に市の担当者は4代にわたり交代しましたが、担当者の引き継ぎが上手くいき、かつ引き継いだ担当者も基本コンセプトをしっかり認識し、遂行してくれたお陰で当初の設計と殆ど変わりなく出来上がりました。こういうケースはごくごくまれであります。この公園には毎年数回は訪れ、四季の変化を楽しみ、自分なりの記録を残しています。

 失敗したケースもあります。これは設計が失敗に終わったのではなく、ある県のお偉い方々が替わったためにおきたことであります。県民のためのレクリエーション施設と森の回廊や、もともとあった流れを復活させ、自然観察が可能な小川や池の再現をする予定でした。毎月のように現地に足を運び、植生から地形まで何度も調査して描いては画き、消しては画き、模型まで作って検討した、思い入れの深いビッグプロジェクトでした。そうした作業を繰り返しながら関係部署と合意形成をとり、やっとの思いで工事に入って間もなく、プロジェクトの方針は突然変わってしまい、当初の設計とは180度違った、なんともお粗末な公園に出来上がってしまいました。新幹線に乗ってその公園が見えるところまでくると、昔の苦い思いがこみ上げてきます。
成田市坂田ヶ池総合公園
担当者が替わってもコンセプトがしっかり引き継がれて立派な公園ができた。成田市坂田ヶ池総合公園(キャンプ広場と吊り橋)【千葉県成田市】

 このように説明すれば、とても面白く楽しい仕事だということがお解り頂けると思いますが、我々の職種を広く認知して貰えるような、業界一体となった広報活動は一切なかったように思います。今、就職を希望している女子学生の一番の人気職種は、企業の広報活動というデータも出ております。インターネット社会になっているにも拘わらず、この業界の広報活動は余りにも寂しい限りです。かくいう我が社もホームページはありますが、情けないことに更新されていません。これからは、ブログや掲示板などを利用して、我々の業界を積極的にPRしていかねばならないと考えているところです。

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コンサルタントの本当の役割とは
われわれコンサルタントの本当の役割とはなんだろうか、ずーっと考え続けてきました。
私は大手の総合コンサルタントに10年、造園の中堅コンサルタントに10年在籍し、‘89年に同僚とともに小さな事務所を開設しました。基本構想から実施設計・施行管理まで関われる事務所を目指して18年になります。その間、趣味としてスポーツクラブ(トライアスロン&スキー)を主宰、自分の会社からいくばくかの協賛をして貰い、ユニホームなどに会社のロゴマークを入れて、自分なりに広報活動をしてきました。しかし、これだけで認知して貰えるほど世間は甘くはありません。

私が考えるこれからのまちづくりに必要なものとしては、
@ 造園コンサルタントという職業を広く世間に認知して貰うこと。
A 地方が抱える問題を一緒に考え分析し、地方に合った方策を見つけること。
B 地方が持つ気候風土、自然環境、歴史・伝統文化、観光物産などを抽出すること。
C 地域住民と時間をかけた討論を重ねること。
D 発注者(担当者)・地元住民との信頼関係を構築すること。
E 思いこみではなく思い入れのある診断ができること
などが、コンサルタントに求められていると思います。

北アルプス山麓 Adventure Games 2001では、地元の皆さんに趣旨や理念を説明してまわり、大会への理解と協力をお願いしている。【長野県大町市】
 私は遊びを通じて、2000年夏から長野県大町市のフィールドを借りて、自然体験活動をメインにしたアドベンチャーゲームズ(冒険遊び)というアウトドアスポーツイベントを夏と冬に開催・運営してきました(本誌102号に掲載)。今年7年目を迎えましたが、北は北海道から南は熊本まで、これまで延べ3,500名を超える参加者を集めています。行政や企業からの財政的な援助は受けずこれまで運営してきました。地元の関係機関・関係者への挨拶回りから、協賛企業へのお願いまで、首都圏に在住・在勤するスポーツ好きな7名の仲間と共に、「余暇活動の一環として、ボランティア」として携わってきました。

 そして、地元の自然景観の発信から保全・保護、観光振興(資源)としての提案まで行っています。この経験を通じて、われわれのこのイベントは、その土地で長く自然を見つめ、地元の人々との交流があって初めて達成可能なことだと気がつきました。地元のワーキンググループ会議にも招かれるようになり、提案・実践してきたことが大町市作成の「仁科三湖整備計画書」に掲載されるに至ったことは喜ばしい限りであります。
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まちづくりのよろず相談窓口として利用して欲しい
坂田ヶ池総合公園内の池の中央に架けられた人道橋。夏は蓮の花が見事です。【千葉県成田市】
私達が“元気・まちネット”を立ち上げようと思いたった経緯は、上記に説明してきたような、知識や経験をもとに東京一極集中のまちづくりを変えてみたいと思ったからであります。地方には、都会には無い優れたものが大きく分けて3つあります。1つは、歴史・気候風土や豊かな自然環境、2つ目は、昔から伝わる伝統芸能・芸術文化や物産、3つ目は、心優しいホスピタリティ(お持てなし)であります。これらの優れた財産を発掘・活用することによって、バブルのころにつくられてきた、“金太郎飴のまちづくり”からの脱却は十分可能であるとの確信を持つに至りました。

 地方は市町村合併で疲弊しています。地方交付税や補助金をあてにしている訳にもいかず、早急に自立しなければならない時代に入っています。国や自治体も何から何まで地方の面倒を見てあげられるほど余裕はありません。市民自ら立ち上がり、“元気なまち”を再生すべく、速やかな行動が求められています。
 このたび私が立ち上げた“元気・まちネット”は、まちづくりの相談を受けるNPOですが、造園家・建築家、土木設計家などによる専門家集団です。長野県大町市で成功させたイベントのノウハウもあります。まちづくりに意欲を燃やす行政や市民の皆さんと、きめ細かく連携していきたいという気持ちもあって“ネット”という名称にしました。地方に元気になって貰うための“相談窓口”として、われわれを利用して頂きたいと思います。

 専門分野の環境整備と、賑わいのあるイベントの両輪がうまくかみ合ってこそ、都市と農山・漁村の交流による活性化の実現が可能と考えています。
 私達は、リゾートや都市公園、美術館や多目的ホールなどの建設が無駄な施設だというつもりはサラサラありません。ただ、首長や役人のための実績(功績)づくりの道具としての施設(箱物)整備は不要だと言いたいのです。本当に納税者のためになる、中・長期的視点に立った施設建設や環境整備に税金が投入されているのかという疑問さえ持っています。
 「自然と人の優しさ」という、かけがえのない財産を有効活用し、まちには活気が溢れ、多くのゲストが訪れるようになってからの整備でも遅くはありません。いかにして税金の無駄使いをなくし、財産を有効活用しながら、活気溢れるまちに再生出来るのか、これからの地方の未来が、そこにかかっています。
代表理事:矢口 正武


BE-PAL 2006年8月号



本文で紹介されている『BE-PAL』2006年8月号の記事を
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